Clutch & Brake
A-8
パウダクラッチ・ブレーキ
■ 性能
1. 励磁電流対トルク特性
図1はパウダクラッチの励磁電流対トルク特性の例です。
この図からも明らかなように、広範囲にわたって、トルクは励
磁電流に比例し、トルクの制御性のよいことを示しています。
機種によって多少の相違がありますが、トルクが電流にほぼ
比例するのは、定格トルクの5 ~ 100%の範囲です。
0
20
40
60
80
100
120
20 40
励磁電流(%)
伝達トルク(%)
80 100
60
2. スリップ回転速度対トルク特性
図2は電流をパラメータとしたスリップ回転速度対トルク特
性です。励磁電流を一定に保てば、スリップ回転速度(駆動
側ドライブメンバと被動側ドリブンメンバの回転速度の差)
に関係なく、トルクを一定に保てます。これは、動力伝達の
媒体として、半固体ともいうべきパウダ(磁性鉄粉)を使用し
ているためです。この特性はいいかえれば、静摩擦トルクと
動摩擦トルクの差がないことであり、トルク制御の容易さを
示しています。
この特性は連続スリップで使用可能なこと、熱容量の大きい
ことと合せて、張力制御、緩衝起動などパウダクラッチ・ブ
レーキの応用範囲を広めています。
たとえば張力制御などの場合、巻径に応じてクラッチ・ブレー
キのスリップ回転速度が変化しますが、スリップ回転速度に
関係なく、単に励磁電流を制御するだけで、簡単にかつ正確
なトルク制御ができます。
トルク(N・m)
0
10
20
30
40
500
0.8A
0.5A
1000
スリップ回転速度(r/min)
励磁電流1.24A(一定)
3. 動作特性
起動時間を制御したいとき、高頻度のくり返し動作を検討す
るときに必要な動作特性を説明します。
図3はパウダクラッチの連結時と開放時の動作を示していま
す。励磁コイルに電圧を印加しますと、励磁電流は励磁コイ
ルの抵抗 RとインダクタンスLによって決まる時定数
(T=L/R)
によって指数関数的に上昇します。トルクは励磁電流のそれ
よりごくわずか遅れて、駆動側と被動側のスリップ回転速度
に関係なく、励磁電流に追従して設定トルクまで上昇します。
そのトルクで引き続き負荷を加速します。
いいかえれば、駆動側と被動側が完全連結しなくても、設定
トルクまで立ち上ることが可能です。この特性はクラッチの
熱容量が大きいことと併せて、緩衝起動、停止や高速起動
停止に対して理想的な特性です。
とくに急速な連結や制動が要求される場合は、励磁コイルに
直列抵抗を入れて時定数を小さくして高電圧電源で励磁した
り、定格電圧の2 ~ 3倍の電圧をトルク立上り時間だけ過励
磁することによって、トルクの立上りを早くすることができます。
定格励磁のときはコイルの時定数 Tの約 4 ~ 5T でトルクは
完全に立ち上がります。また反対に励磁をしゃ断したときに
トルクが消滅するまでに要する時間は約1T 程度です。
各機種ごとのコイルの時定数は各々の仕様表を参照ください。
電圧
定格励磁電圧
スイッチOFF
時間
スイッチON
電流
定格励磁電流
時間
コイル定数(T)
ト
ル
ク
時間
回
転速度
トルク消滅時間
時間
63%
飽和トルク
不動作時間
63%
10%
トルク立上り時間
起動時間
被動側
被動側
駆動側
図1 励磁電流対トルク特性(代表例)
図2 スリップ回転速度対トルク特性
図3 パウダクラッチの動作特性