技術資料
140
技術資料
TECHNICAL DATA
141
技術資料
材料特性(スチール)2 / 2
区分
記号
熱処理
機械的性質の代表値
機械的性質の代表値
材料特性
降伏点または耐力
(
N/mm
2
)
引張り強さ
(
N/mm
2
)
伸び
(%)
絞り
(%)
硬さ
(
HB
)
(
HRC
)
炭素鋼
一般構造用圧延鋼
鋼材
(
JIS G 3101
)
SS330
−
195
以上
330
∼
430
26
以上
−
−
−
低炭素鋼(
0.3%C
以下のリムド鋼またはセミキルド鋼)を熱間圧延で鋼板、平鋼、形鋼、棒鋼などにして、建築物、
橋、船舶、鉄道車両などの構造物に使われる。
JIS
鋼材のうちで最も多く使われている鋼種で、特に
SS400
の使用
量は多い。比較的経済的な材料であるが、あまり溶接性がよくない。厚板
50mm
以上の溶接には、
Mn
などを添加し
た溶接構造用圧延鋼材(
SM
材)が使われる。
SS400
−
215
以上
400
∼
510
21
以上
−
−
−
SS490
−
275
以上
490
∼
610
19
以上
−
−
−
SS540
−
390
以上
540
以上
17
以上
−
−
−
機械構造用炭素鋼
鋼材
(
JIS G 4051
)
S45C
焼ならし
345
以上
570
以上
20
以上
−
167
∼
229
−
一般構造用圧延鋼材より、信頼性が高く質の高いキルド鋼を鍛造・圧延などして製造される。軸・歯車などの機械部
品や、自動車・エンジン部品などに多く使われている。
S
−
C
材のうちで最も多く使われるのが、
S45C
(
0.45%C
)
で
SS
材に比べると多少高くなる。低炭素のものは焼きならしのままで、ボルト・ナット・ピンなどの小物軸類に使われ、
0.3%C
以上のものは水焼き入れ後、
550
∼
650
℃で焼き戻しして使用されるが、焼入れ性があまりよくないので、主
として小物部品に限られ、太いものは合金鋼のほうがよい。
焼鈍
−
−
−
−
137
∼
170
−
焼入れ
/
焼戻し
490
以上
690
以上
17
以上
45
以上
201
∼
269
−
S50C
焼ならし
365
以上
610
以上
18
以上
−
179
∼
235
−
焼鈍
−
−
−
−
143
∼
187
−
焼入れ
/
焼戻し
540
以上
740
以上
15
以上
40
以上
212
∼
277
−
S55C
焼ならし
390
以上
650
以上
15
以上
−
183
∼
255
−
焼鈍
−
−
−
−
149
∼
192
−
焼入れ
/
焼戻し
590
以上
780
以上
14
以上
35
以上
229
∼
285
−
炭素工具鋼
鋼材
(
JIS G 4401
)
SK105
(旧
SK3
)
焼入れ
/
焼戻し
−
850
以上
−
−
−
61
以上
構造用炭素鋼よりも硬く、
C
以外に特別な合金元素を含まない
0.6
∼
1.5%C
の不純物の少ない高炭素鋼であり、
炭素工具鋼やばね用炭素鋼などがある。いずれもキルド鋼からつくられる。炭素工具鋼(
SK
)は刃物や工具に使われ
る鋼で、
C
の多いものほど硬くなり、切削性もよくなるが、粘り強さは悪くなる。使用目的に合わせて
C%
を選ばなけ
ればならない。取り扱いやすく、安価なため高い性能を必要としない工具に使われている。熱に弱いので、熱間で使
用できるように炭素工具鋼の欠点を補った合金工具鋼がある。
SK95
(旧
SK4
)
焼入れ
/
焼戻し
−
770
以上
−
−
−
61
以上
SK85
(旧
SK5
)
焼入れ
/
焼戻し
−
−
−
−
−
59
以上
機械構造用合金鋼︵強靭鋼︶
クロム鋼
鋼材
(
JIS G 4104
)
SCr415
焼入れ
/
焼戻し
−
780
以上
15
以上
40
以上
217
∼
302
−
中炭素鋼に
1%
前後の
Cr
と
0.6
∼
0.85%
程度の
Mn
が含まれている焼入れ性を改善した鋼である。直径約
60mm
程度まで焼入れができ、耐摩耗性に優れている。この鋼の熱処理は
830
∼
900
℃からの油冷で焼入れをした後、
520
∼
620
℃での焼戻しをおこない、焼戻し後水冷をして焼戻し脆さを防ぐ。
SCr415
と
SCr420
は、一次・二次と
焼入れをおこない、焼戻しは
150
∼
200
℃の空冷である。
SCr420
焼入れ
/
焼戻し
−
830
以上
14
以上
35
以上
235
∼
321
−
SCr440
焼入れ
/
焼戻し
785
以上
930
以上
13
以上
45
以上
269
∼
331
−
クロムモリブデン鋼
鋼材
(
JIS G 4105
)
SCM415
(旧
SCM21
)
焼入れ
/
焼戻し
−
830
以上
16
以上
40
以上
235
∼
321
−
クロム鋼に
0.15
∼
0.45%
の
Mo
を添加して焼入れ性(直径
60
∼
100mm
程度まで焼入れできる)や、焼戻しによ
る硬さの低下を改良し、溶接性をよくした鋼がクロムモリブデン鋼である。
400
∼
500
℃までのクリープ強さが大きく、高温高圧用のパイプとしても使用され、機械構造用合金鋼の中で最も多
く使用される。
この鋼の熱処理は
830
∼
900
℃からの油焼入れの後に、
530
∼
630
℃の焼戻しである。クロム鋼と同様に、焼戻
し後は急冷をする。また一次・二次焼入れをした後に
150
∼
200
℃に空冷をする種類もある。
SCM420
(旧
SCM22
)
焼入れ
/
焼戻し
−
930
以上
14
以上
40
以上
262
∼
352
−
SCM435
(旧
SCM3
)
焼入れ
/
焼戻し
785
以上
930
以上
15
以上
50
以上
269
∼
331
−
SCM440
(旧
SCM4
)
焼入れ
/
焼戻し
835
以上
980
以上
12
以上
45
以上
285
∼
352
−
SCM445
(旧
SCM5
)
焼入れ
/
焼戻し
885
以上
1030
以上
12
以上
40
以上
302
∼
363
−
ニッケルクロム鋼
鋼材
(
JIS G 4102
)
SNC236
(旧
SNC1
)
焼入れ
/
焼戻し
590
以上
740
以上
22
以上
50
以上
217
∼
227
−
中炭素鋼に
0.2
∼
1.0%
の
Cr
を加えて焼入れ性を向上させ、
1.0
∼
3.5%
の
Ni
を加えることによって靭性を向上さ
せた古くから使われている鋼である。熱処理が適当でないと、焼戻し脆さという、材質が脆くなる作用がある。砲身用
素材の合金鋼として開発された。
熱処理は
SNC415
と
SNC815
以外は、
820
∼
880
℃の油焼入れの後に、
550
∼
650
℃の焼戻しをおこない、焼
戻し後は急冷をおこなう。
SNC415
(旧
SNC21
)
焼入れ
/
焼戻し
−
780
以上
17
以上
45
以上
235
∼
341
−
SNC631
(旧
SNC2
)
焼入れ
/
焼戻し
685
以上
830
以上
18
以上
50
以上
248
∼
302
−
SNC815
(旧
SNC22
)
焼入れ
/
焼戻し
−
980
以上
12
以上
45
以上
285
∼
388
−
SNC836
(旧
SNC3
)
焼入れ
/
焼戻し
785
以上
930
以上
15
以上
45
以上
269
∼
321
−
ニッケルクロム
モリブデン鋼
鋼材
(
JIS G 4103
)
SNCM220
(旧
SNCM21
)
焼入れ
/
焼戻し
−
830
以上
17
以上
40
以上
248
∼
341
−
ニッケルクロム鋼に
0.15
∼
0.7%
の
Mo
を添加して焼入れ性(直径
200mm
程度まで焼入れできる)を一層向上させ
た鋼である。また、ニッケルクロム鋼の欠点である高温焼戻し脆さも
Mo
の添加で減少させた。
構造用合金鋼の中で最も強靭で優秀な鋼がニッケルクロムモリブデン鋼である。
熱処理は、
SNCM220
、
415
、
630
以外は
820
∼
870
℃の油焼入れの後に
570
∼
680
℃の焼戻しをおこない、焼
戻し後は急冷をおこなう。
SNCM415
(旧
SNCM22
) 焼入れ
/
焼戻し
−
880
以上
16
以上
45
以上
255
∼
341
−
SNCM439
(旧
SNCM8
)
焼入れ
/
焼戻し
885
以上
980
以上
16
以上
45
以上
293
∼
352
−
SNCM630
(旧
SNCM5
)
焼入れ
/
焼戻し
885
以上
1080
以上
15
以上
45
以上
302
∼
352
−
機械構造用マンガン鋼
鋼材および
マンガンクロム鋼
鋼材
(
JIS G 4106
)
SMn420
(旧
SMn21
)
焼入れ
/
焼戻し
−
690
以上
14
以上
30
以上
201
∼
311
−
マンガン鋼は炭素鋼(
0.17
∼
0.46%C
)に約
1
∼
1.6%
の
Mn
を添加し、焼入れ性を向上させるとともに耐摩耗性
も改善した安価な合金。低マンガン鋼、機械構造用マンガン鋼または
D
鋼(
ducol steel
)とも呼ばれている。また、
0.9
∼
1.35%C
で
11
∼
14%
の
Mn
(
Mn/C
≒
10
)を主成分とした鋼を高マンガン鋼(
SCMnH
)、またはハッドフィー
ルド・マンガン鋼と呼んでいる。高マンガン鋼は非常に耐摩耗性に富んだ合金鋼で、鋳物の型で耐摩耗・耐衝撃材料
として使われる。マンガンクロム鋼(
SMnC
)は、マンガン鋼に
0.5%
くらいの
Cr
を添加して、さらに焼入れ性を向
上させた鋼である。
Cr
を添加するとマンガン鋼の欠点であった低い焼戻し抵抗性が改善され機械的性質もよくなる。
SMn443
(旧
SMn3
)
焼入れ
/
焼戻し
635
以上
780
以上
17
以上
45
以上
229
∼
302
−
SMnC420
(旧
SMnC21
)
焼入れ
/
焼戻し
−
830
以上
13
以上
30
以上
235
∼
321
−
SMnC443
(旧
SMnC3
)
焼入れ
/
焼戻し
785
以上
930
以上
13
以上
40
以上
269
∼
321
−
合金工具鋼
合金工具鋼鋼材
(冷間金型用)
(
JIS G 4404
)
SKS3
焼入れ
/
焼戻し
−
−
−
−
−
60
以上
冷間金型用(
SKS
・
SKD
)は、
0.80
∼
2.30%C
の高炭素鋼に
Mn
、
Cr
、
W
、
Mo
、
V
などを添加して焼入れ性を改
善している。高
Cr
にして耐摩耗性を向上させている種類や、高
Mn
にして加工後の熱処理による変形を少なくする種
類がある。熱間金型用(
SKD
・
SKT
)は、
0.25
∼
0.60%C
と、合金工具鋼の中で一番少ない低炭素鋼に
Cr
、
W
、
Mo
、
V
などを比較的多く添加している工具鋼である。急熱・急冷を繰り返しても表面のひび割れを防ぐために
C%
を
低くしてあり、
W
を含んでいるので約
600
℃の高温にも耐えることができる。
SKS31
焼入れ
/
焼戻し
−
−
−
−
−
61
以上
SKS93
焼入れ
/
焼戻し
−
−
−
−
−
63
以上
SKD1
焼入れ
/
焼戻し
−
−
−
−
−
62
以上
SKD11
焼入れ
/
焼戻し
−
−
−
−
−
58
以上
SKD12
焼入れ
/
焼戻し
−
−
−
−
−
60
以上
合金工具鋼鋼材
(熱間金型用)
(
JIS G 4404
)
SKD61
焼入れ
/
焼戻し
−
−
−
−
−
50
以上
SKT4
焼入れ
/
焼戻し
−
−
−
−
−
52
以上
高速度工具鋼鋼材
(タングステン系)
(
JIS G 4403
)
SKH2
焼入れ
/
焼戻し
−
−
−
−
−
63
以上
高速度工具鋼は、
0.73
∼
1.6%C
の炭素鋼に
W
、
Cr
、
Co
、
V
などを添加した高温に耐えられる工具鋼で、ハイスと
も呼ばれている。一般に、高速切削を行なうと、工具刃先の温度が上がり、軟化して切れ味が低下する。しかしこの
工具鋼は、高速切削で刃先が高温になっても軟化しにくく、硬さを維持することができる。
SKH10
焼入れ
/
焼戻し
−
−
−
−
−
64
以上
高速度工具鋼鋼材
(モリブデン系)
(
JIS G 4403
)
SKH51
焼入れ
/
焼戻し
−
−
−
−
−
63
以上
SKH57
焼入れ
/
焼戻し
−
−
−
−
−
66
以上
特殊用途用鋼
硫黄および
硫黄複合快削鋼
鋼材
(
JIS G 4804
)
SUM11
−
−
−
−
−
−
−
最も古くから使われている快削鋼が硫黄快削鋼である。鋼に
0.08
∼
0.40%
の
S
と、
0.30
∼
1.65%
の
Mn
を添加
することによって、鋼中の
MnS
が潤滑剤の役目やチップブレーカー(
chip
−
breaker
:切りくずを細かくする作用を
もつ物質)として働き被削性が向上する。さらに、
0.12%
以下の
P
を添加することにより、一層被削性を向上させて
いるものもある。切削が容易で、安価で仕上がりもよくなるが、材料強度には問題がある。
SUM21
−
−
−
−
−
−
−
SUM22L
−
−
−
−
−
−
−
SUM24L
−
−
−
−
−
−
−
SUM31
−
−
−
−
−
−
−
SUM31L
−
−
−
−
−
−
−
SUM42
−
−
−
−
−
−
−
高炭素クロム軸受鋼
鋼材
(
JIS G 4805
)
SUJ1
焼入れ
−
−
−
−
−
58
以上
軸受鋼(
bearing steel
)は、軸受の鋼球や、軌道輪であるレースに使用される鋼である。軸受は点または線接触の
状態で繰り返し荷重を高速で受けるために、硬さ、耐摩耗性、降伏強さ、靭性、疲れ強さ、寸法安定性などが要求
されており、特にころがり疲れ寿命の長いことは重要である。また、精度と耐久度の上から、不純物が入るのを避け、
セメンタイトが球状化して細かく一様に分布したよい鋼でなければならない。
約
1.0%C
、
0.9
∼
1.6%Cr
の高炭素クロム鋼が用いられ、製品の大きさに合わせて
Mn
、
Si
、
Mo
などを添加する。
熱間加工が容易で、焼鈍しをすれば機械加工も容易にでき、工具としても使われている鋼である。
SUJ2
がベアリングの主要材料として最も多く使われている。
SUJ2
焼入れ
−
−
−
−
−
SUJ3
焼入れ
−
−
−
−
−
SUJ4
焼入れ
−
−
−
−
−
SUJ5
焼入れ
−
−
−
−
−